院長挨拶Greeting from the director

私は東大阪徳洲会病院の院長に就任するまでは、形成外科専門医として臨床にあたってきました。形成外科の対象となる傷病に「瘢痕」(=きずあと)があります。「きずあと」を治すと言うと、手術で瘢痕を消すことという印象を持ちますが、実際は「きずあと」が見た眼にわからなくなったとしても医学的には完全に消えていず実際は目立たなくなっているだけです。この外見上の瘢痕を目立たなくすること自体は、それなりの技術をもった形成外科医が手術をすれば 難しいことではありません。それよりも難しいのはどれだけ患者さんに満足してもらうかということです。手術をして顔の醜い瘢痕が目立たないようになったとしても、その患者さんから、「手術をしてこんなにわからなくなった、手術をしてよかった」と言ってもらえなかったらその手術は成功とはいえません。
「きずあと」を治すということの本質は、外見上だけではなく その傷痕が原因でできた心の「きずあと」(=コンプレックス)を、外見上の手術をすることをきっかけとして、取り除くことが最も大事なことです。
同じ様な傷痕があっても、ものすごく気にする人もあれば全く気にしない人もいます。 同じように、手術で同じ結果を得ても「なんだ、これぐらいにしかならないのか」と思う人と、「ここまできれいになって」と思う人とがおります。それは治療結果からいえば 天と地ほどの差があります。つまりは、傷痕を治すということはその人のコンプレックス を軽くすることなのです。これを実践するためには、①患者自信が傷痕を治したいと強く望んでいる、②傷痕は無くならない、目立たなくなるだけと理解してもらう、③医者と患者の間に十分な信頼関係がある(この先生なら任せられる)という条件が必要だと実感し、実践を心がけてきました。 一人ひとりの患者さんの求めるQOLは異なりますし、その実践方法はさらにいろいろなことを考えなければなりません。ここで「東大阪徳洲会病院はこれをします」という具体的な話をするのはできませんが、私のこれまでの経験を踏まえ、東大阪徳洲会病院では家族の方々とともにひとりの患者さんのQOLを上げるためにどのようなことが大切なことなのか、また、どのように実践していくべきなのか、それを考え続ける姿勢を持ちたいと考えています。